アキレス腱断裂。全部失った。
栄光も、歓声も、気力も、友情も、愛情も、全部失った。
雪が降るクリスマスイヴ、野郎で集まって江の島に行って何が楽しい?

小林は、眠ったままの及川を待っている。
は、飛べなくなった俺のこと、待っていてくれたのか?

「徹、イヴの夜に小林さんのこと泣かせたでしょ」
「ち、違うって! あれは事故」
「そうなんだ。本当なんだね。小林さんと江の島にいたのは」
「江の島には野郎だけで行ったんだ! そしたら小林がいたから・・・」
「私のことは誘ってくれなかったのに」

まだ俺たち、続いてたんだな。

「もう、いいの。これで全部おしまい。過ぎちゃったけど、メリークリスマス。よいお年を。バイバイ」

吐き捨てるように、捲し立てるように、の言葉が放たれて、俺に突き刺さる。
俺の胸元に持っていた紙袋を押し付けて、去っていく。
追いかけることができなかった。
飛べなくなった俺には、の傍にいる資格はない。

紙袋はは軽い。
中にはMerryChristmasと書かれた緑色の袋。
感触は柔らかい。
開けば、俺がほしがっていたマフラーが入っていた。
これ、中学生の小遣いで買えるようなもんじゃないだろ。何やってんだよ。

いつか飛べるようになったら、また俺と一緒にいてくれないか。
伝えたくても伝えられない言葉を、ため息に混ぜて吐いた。





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