甘やかされたいと思ったけれど、いざ顔を見たらそういう気分じゃなくなった。
甘えていいよ、って言ってあげたくなった。
それくらい、仁成が表情がなくて暗い顔をしている。


「仁成」
「何?」
「目が死んでる」
「腐った魚みたいだって?」
「うん」
「否定しろよ、そこは」


一応、ツッコミはできるみたいだ。
どうやって甘やかせようかと考えていたら、仁成のほうから私に抱きついてきた。
顔をこすりつけてくる。


「仁成、ちょっと痛いよ」
「こうしてると、がそこにいるって感じられるから、いいんだ」
「じゃあ、我慢する」


私を抱きしめる力が一層強まる。
少し、苦しい。
でも、我慢する。


「ひーとーなーりー」
「・・・」
「私はここにいるよ。逃げたりしないよ」
「うん、わかってる」


何がそんなに不安なの?
尋ねてもきっと答えてくれないと思う。
甘えてもいいくらい元気になるまで、もう少し我慢かな。
それまで、存分に甘えていいよ。





[ 甘える ]





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