姫、お迎えに上がりました」
「王子様、早く私をここから攫ってくださいませ」
「もちろんです!」


という妄想をして、王子様の顔を仁成にしてみたけれど、それはないなと頭の中から消し去った。
仁成は、攫っていってはくれないだろうな。
お願いしても、「断る」と言われそう。
そして、「勝手に出て来い」と言われそう。


「王子キャラじゃないもんね、仁成は」
「ボケタか、?」
「白馬の王子様ってキャラじゃないねって」
「おとぎ話の世界の住人じゃねえよ、俺は。そんなに姫になりたかったら、外国の王子に見初められれば?」
「冷たいね、私のこと好きじゃないの?」
「好きだよ」


仁成は体ごと攫ってはくれないけど、心は攫ってくれるよね。


「そもそも、は捕らわれの姫でもないから、を攫う必要はないだろ?」
「そういう願望っていうか」
「そんなに攫ってほしけりゃ、誰かに攫われろ。そしたら、攫いに行くから」


まずは私を攫いに行かざるを得ない環境を整備しろってことね。
そりゃ無理な相談だ。





[ 攫う ]





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