「人の情けに縋るのは悪いことじゃないよ」
「そうかぁ? 俺にはそう思えないな」
「ザックスとは本当に馬が合わないね」

とことんとは馬が合わない。
ため息をついたら、は手の中の雑誌を丸めて俺の頭をスカッとするくらい気持ちの良い音で叩いた。

「痛っ。何すんだ、
「ため息つかないの! エアリスの幸せが逃げる」
「俺のじゃなくてエアリスのかよ」
「そう。あんたの幸せはエアリスの幸せ。わかってるでしょ?」
「わかってるよ。でも、それをには言われたくない」

もうこれ以上、に貸しは作りたくない。
は俺に甘い。
払わなくていいと言われても、ツケは返したくなるもんだ。

普通、好きな男に好きな女がいたら、その女に優しくなんてできないだろ。
どうしてそんなことができるんだよ。
は頭がおかしいんじゃないかと思う。

「それは、違うよ」
「どうして?」
「エアリスには敵いっこないってわかってるし、彼女のことも私は大好きだから、二人が幸せになってくれればそれでいい」
「そういうもんか?」
「ザックスにはわからないかもしれないけど、私はそういうできた人間なの!」

どんなに笑っていても、裏では泣いていたりするんだ。
知らないふりをして、気づかないふりをして、に縋っている俺は、最低だな。





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