職員室で数学の先生に話をしに来たのに、担任の教師につかまって次のホームルームの資料を運べと言われた。
プリントかと思えば、薄い冊子。
クラスの生徒分あるから、かなり重い。
女子生徒一人に運ばせるなんて、鬼か。
仕方がなく運んでいると、柊くんとすれ違った。


、重そうだな」
「うん、重い」


それだけ? それだけなの?
本当にそれだけ言って、柊くんはどこかへ向かっていった。
手伝ってくれたっていいじゃん。

しばらくとぼとぼ歩いていると、後ろから誰かが走ってきて私の目の前でくるりと回れ右をして、
私の腕の中の冊子を全部奪っていった。


「柊くん!」
「重いんだろ。俺が運ぶ」
「用事があったんじゃないの?」
「もう済んだ」
「私も、半分運ぶよ」
「重くねえから俺が全部運ぶよ」


さすがだな。
重くない、だなんて。


「ありがとう。さすが頼りになるね、柊くん」
「どういたしまして」


すごくぶっきら棒な言い方。
照れてるんだろうな。素直じゃないね。
おかしくて笑ったら、ぷいっと顔を逸らされた。


「照れてるー」
「そんなんじゃねえよっ」
「じゃあ、私の目を見て」
「・・・・・・・・・無理、これ以上、と目を合わせてらんねえ」


少し顔を赤くして、柊くんはまた顔を逸らした。
やっぱり、照れてるな、柊くん。





[ 照れる ]





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