「ようやく来たか。重役出勤か?」
「社長だからな。それと、私に全く似ていない声真似をするのはやめろ」
「もうっ、待ち合わせの時間、どれだけ過ぎたと思ってるの?」
「30分程度」
「間違っていないけど、遅れたことに対する侘びの一言もないの?」
「すまない」
「心が篭もってなーい」


どうして、こう、女という生き物は、逐一うるさいんだ。
やれやれ。
肩を竦めていると、のタックルでよろめいた。


「何をする?」
「寒いの」


タックルをしたわけではないようだ。
私の腕にの腕がしっかり絡みついている。
顔を腕に摺り寄せてくる。


「やめろ。ファンデーションがつく」
「やだ、温かいんだもん」
「どれだけ冷えたんだ」


の頬を片手で包み込む。
芯まで冷え切ったように、冷たい。


「寒い。紅茶、飲みたい」
「待たせて悪かった。まずはカフェに行こう」
「うん、ありがとう」


次からは、私が遅れたときにが時間をつぶせるように、周りに店があるところにしよう。
が私の腕に絡みつく力が、強くなった。





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