「憧れは、理解から最も遠い感情、か」
「なんですか、それ?」

執務室に戻りただの独り言のつもりで呟いたが、まさか執務室に人がいるとは気付かず、面倒なことになった。

、なんでここにいるんだ?」
「ここがいちばん落ち着きますから」

ソファで茶を飲んでいる
瀞霊廷中をひっくり返すような事件があったのにも関わらず、呑気なことだ。


「雛森は、藍染に憧れていた」
「そうですね。ずっと憧れて、五番隊に入隊して、副隊長になって、部下でいられたことを誇りに思っているとおっしゃってました」
「でも、その藍染は雛森を殺そうとした」
「ショックでしょうね」
「憧れることは、価値の低いことなのか? 理解することは、重要なのか?」


は手を顎にかけて少し考える。


「私は、憧れることはとても幸せなことだと思います」
「幸せ?」
「ええ。相手の理想的な部分に惹かれ、それを目標にして自分も理想に近づきたいと思う。
 生きる原動力になります。雛森さんはまさにそれだったかと」
「そうだな」
「それに・・・」
「それに?」
「憧れるのは、タダですよ!」


この空気の中、満面の笑みでそんなことを言うか!?
冗談なのかそうでないのか真意は掴めないまま、は俺の分の茶を淹れに行った。

ああ、そうだな。
憧れるのに金はいらねえな。
俺にはない、のそういう考え方、憧れるよ。


「お茶をどうぞ、隊長」
「悪いな。ありがとう」
「憧れは、崩れるときもあります。理想が理想でなくなったときに」
「そうだな」
「隊長は、ずっと私の憧れであり、理想の人でいてくださいね」
「努力する。お前もな、
「はい、努力します」





[ 憧れる ]





BACK>

inserted by FC2 system