・・・寝てるのか」


トイレから戻るまでの1分足らずで、は眠ってしまったらしい。
床に足を投げ出したまま、上半身だけ俺のベッドに預けている。


「ったく、風邪ひくぞ」


布団はの下敷きになっている。
仕方がないから俺のジャージをかけてやる。

の髪を撫でる。
甘い、いい匂いがする。
の背にぴたっと体を寄せる。
眠ったばかりだというのに、起きる気配がない。
片手をの顔から首筋、肩、腕に手を沿わせる。
とても、柔らかい。俺とは違う生き物みたいだ。


って、いいよな」
「何が?」
「起きてたのか?」
「なんか、触られてたみたいで、起きちゃった」


起きたと言ったわりに、起き上がる気はないらしい。
まだ上半身をベッドに預けたままだ。
バレたなら調子に乗るだけ。
俺の手は、の腰から太ももに移る。


「くすぐったい、やめて」
「気持ちいいだろ」
「やだ、やめて」
「やだね」


俺から離れようとするを羽交い絞めにし、片手の指で唇をなぞる。


「ひ、と、なり」
「ん?」
「キス、したい」
「そういう気分?」
「うん」


さあ、どうしようか。
焦らすか、要求どおりにするか。





[ なぞる ]





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