仕事帰りに繁華街を歩いていたら、いつの間にか隣にレノがいた。
名前を呼んだらこちらを向いてニッっといつものように笑ったけど、
それだけで何も言わなかった。
何か、あったのかな?


「お腹すいたね」
「そうだな」
「仕事、終わった?」
「んー、どうすっかなー」
「ご飯、食べに行かない?」
「そうだな。飯食いたいぞ、と」


話しかけたら、意外と会話は続いた。
何が食べたいかな。
そうだ、新しくできたバルに行こう。
提案したら、頷いてくれた。

すっと手を引かれる。
軽く手を握ったつもりなのに、レノは強く握りしめてくる。
そんなことしなくても、離さないのに。


「レノ、そんなに強く握らなくても・・・」
「強く、握りたいんだぞ、と。早く、案内してくれよ、そのバルに」
「うん、わかった。私も早く食にありつきたい」
「食い気ばっか」
「生理的欲求には負けるの」


弱音は絶対吐かないけど、その分ボディタッチが増える。
弱った心、私が癒してあげるよ。





[ 握りしめる ]





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