ツォンさんの額に青筋が浮かびだした。
空気がビリビリと震える。
慌てて事務所を飛び出した。
どうして誰もレノがどこにいるかわからないのだろうか。
どうして私にはレノがどこにいるかすぐにわかるのだろうか。
神羅ビルの屋上。給水塔の陰でレノが眠っている。
「見つけた!」
「んー、か? しばらく寝かせて」
「嫌だ。ツォンさんが爆発しそうなくらい怒ってるよ」
「だったら尚更だぞ、と」
「嫌だ。静かに仕事したい」
「がチューしてくれたら起きる」
「絶対、嫌!」
断ったのに、腕を強く引かれ、レノの体に覆いかぶさってしまった。
逃げようとしても、抱きしめられて逃げられない。
「レノ! 離して!」
「絶対、嫌!」
「私の真似しないで」
「1分だけ、このままで」
最後の一言が、レノらしくないほどに弱々しかった。
知ってる、レノが行方を暗ますときは、弱っているときだって。
だから1分だけ、レノのしたいようにさせてあげる。
でも、1分経ったら、
「ほーら、60秒経過しましたよー。さっさと事務所に戻ってツォンさんに報告しに行くよ」
「そうだな、俺たち結婚しますって」
「アホか! そうじゃないでしょ」
少しは元気になったみたいでよかった。
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