諦めるために利用するのは少し気が引けるけれど、もう俺にはそれしかなくて。
、ごめんな。成瀬、ごめんな。

と二人きりになれそうな機会を伺って。
気持ちを伝えた。


「俺、が好きだ」
「高岩くん・・・」
「知ってる、成瀬と付き合ってるんだろ」
「う、ん」
「それでも、好きなんだ」
「ごめんね、高岩くん。私は成瀬くんのことが好きだから、高岩くんの気持ちには応えられないよ」
「そりゃそうだよな。わかってたんだけどな」
「本当に、ごめんなさい」
が謝ることじゃないよ! 困らせて、ごめん。成瀬にもよろしく言っといて」


俺が去るまで、はずっと俯いたままだったと思う。
はっきり振られたから、ちゃんと諦めよう。
でも、きっと、のことを好きだったときの気持ちは、この先ずっと忘れないと思うんだ。





[ 伝える ]





珍しく、が部活が終わってから会いたいと言ってきた。
何かあったのだろうか。少し心配だ。
着替えて体育館に入ると、高岩が唐突に頭を下げてくる。



「成瀬、ごめん」
「何が?」
「先に謝っとく」


腑に落ちないまま準備運動をし、練習に入った。

すっかり陽が落ちた頃、と待ち合わせている図書館へ向かう。
図書館の中で話すわけにはいかないから、そのまま帰路につく。
は少し元気がない。



「何か、あったのか?」
「あのね、高岩くんに、好きって言われた」
「あいつ、だから・・・」
「私達が付き合っていることも知ってた」
「誰にも言ってないんだけどな」
「気付かれるようなこと、してるってことだね」
「洞察力が鋭いからな。・・・それで、俺に言いたかったのはそのこと?」
「うん、私はやっぱり成瀬くんが好きだから、振っちゃったんだけど、それはそれで苦しいね」
「そうか」
「高岩くん、ちゃんと次の人、見つけられるかな」
「大丈夫だろ、高岩だし」
「そうだね」


振ったことへの罪悪感が消えなくて辛いんだな。
カーディガンの袖口から出ている手を、そっと握った。




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