赤点を取ったクラスメイトに数学を教えていたら帰りが遅くなった。
今日は部活がないからと一緒に帰ろうと思っていたのに。
『先に帰るね』とからメールが来た時点で諦めていたものの、諦めきれず走って帰る。

あっさり校門をくぐってすぐの姿が見つかった。
でも、隣に男がいた。
自分もよく知った男。

彼はいつもより表情が柔らかいし、声も楽しそうだ。

ああ、そうか。
好き、なんだな、のこと。
俺とが付き合っていること、知らないのだろうな。

複雑だな。
溜息ひとつ、宙に浮かべた。





[ 気づく ]





と歩いていると、突然が振り返った。
誰かいるのだろうか。
俺も振り返ると、成瀬が一人で歩いていた。


「成瀬くーん! 結局帰るの遅くなっちゃった」
「そうか」
「うん、だから、高岩くんと三人で一緒に帰ろ」


の表情と声を聞いたら、誰でも気付くだろう。
と成瀬が深い仲なんだって。
俺の出る幕、ないよな。




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