髪を明るい色に染めたら、心まで明るくなった。
覚司に驚いてほしくて。

覚司は驚いてくれたけれど、私の心は弾まなかった。
どうしてだろう。





[ 染める ]





が髪を染めていた。
随分明るい色だ。
俺に驚いてほしくて染めたらしい。
十分、驚いた。
でも、残念だ。
染めたら傷むだろ。
の髪は綺麗なままの方がいい。


「なあ、どうして俺を驚かせたかったんだ?」
「わかんない。なんとなく」
「それだけで、怒られるかもしれないのに染めたのか?」
「うん」


俺が驚いたと言っても、は嬉しそうにしていない。
目的は達成したんだろ? 嬉しそうにしろよ。


「どうせ驚かせるなら、コスプレしてくれればよかったのに」
「例えば?」
「んー、ならなんでもいいかな。ナースとか、バニーガールとか、猫耳とか」
「やだ、恥ずかしい。驚くんじゃなくて、覚司が喜ぶだけじゃん」
「いやいや、驚くって。あとは不意打ちかな」
「不意打ち?」
「うん、ふ・い・う・ち」


触れるだけのキスをしたら、は驚いた顔を赤く染めた。


「こういうの、とかな」
「すごく勇気がいるから私には無理だよ」
「じゃあ頑張って練習しようなー」


の頭をぽんぽんと撫でた。
赤い顔のままのは動く気配がなかった。
そろそろ、腹減ったから帰りたいんだけどな。

帰ろう、と声を掛けようとしたら、は俺に抱きついてきた。
おお、不意打ちの練習か。本当に今のは不意打ちだ。




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