我慢できなかった。
溜まった物がすべて混ざり合って混沌としている。
バスケットも、勉強も、恋も、友情も。

夕日がの頬を橙色に染める。

夕日だけのせいではない。
俺のせいだ。
無理矢理、唇を奪ったから。
嬉しくて頬を染めているならどれだけいいか。


「高岩のバカ! やっていいことと、悪いことがあるでしょ」
「ごめん」
「ごめんで済ませるなら、最初からやらないで」
「ごめん」


突き飛ばされて尻餅をついた。
は泣いていたと思う。


「好きだから、無理矢理とかそういうことはやってほしくないの!」
、俺・・・」
「ほとぼりが冷めるまで、私には話しかけないで」


去り際に見せた苦しそうな表情が忘れられない。
後悔先に立たず。





[ 奪う ]





高岩が待つ教室へ向かっていたら、走ってきた人にぶつかった。
体で受け止める形になり、慌てて離そうとして硬直する。
俺を見上げた顔が、の泣き顔だったから。


「ごめん、成瀬くん」
、大丈夫か?」
「大丈夫じゃないけど、大丈夫」
「大丈夫じゃなさそうだな」


涙をぬぐって作り笑いをする
痛々しいな。
高岩に何かされたか?
好きなんだろ、高岩のこと。

走り去るの背中を見送って教室に入ると、高岩が床に座り、顔を膝に埋めていた。


「何やったんだ。、泣いていたぞ」
「何でもない」
「高岩がうだうだしているなら、俺がを奪ってもいいんだな」
「成瀬! お前、のこと・・・」
「俺は、お前達の味方だ。個人をどうこう思ってはいないよ」
「だったら、どうして」
「もしが俺と一緒にいて笑ってくれるのなら、高岩に泣かされるよりそっちの方がいいってことだ。
 好きなんだろ、のこと。も、お前のこと好きなんだよ。ちゃんと、その気持ち、汲んでやれ」
「ああ」






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