名前も知らない女子生徒。
上履きを見たら、一学年上だとわかった。
よく俺達の試合を見に来ている。
校内で見かけると、いつも微笑んでくれる。

誰なんだろう。

高岩と並んで廊下を歩いていたら、彼女を見かけた。
高岩が彼女に呼びかける。


先輩」
「あら、高岩くん」
「最近来てくれてます? 俺のこと見れくれてます?」
「行ってるけど、高岩くんのことは見てない」
「冷たいっすねー」


さんっていうのか。
高岩の知り合いか。
高岩と目を合わさずに会話していたさんは、俺に気付いて微笑んでくれた。


「成瀬くん、こんにちは。高岩くんのこと、よろしくね」
「あ、はい」
「またね」


去り際の微笑みに見惚れていると、高岩にわき腹を突かれた。


「中学の先輩なんだ」
「そうか」
「お前も先輩みたいに微笑む努力をしたらどうだ?」
「そんな必要はない」


さんの背中に、微笑みかけた。





[ 微笑む ]





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