※本編の固定ヒロインの設定




桃が死神の学校とやらでできた友達を休みに連れて帰ると、ばあちゃんから聞いた。
どうせ桃みたいに落ち着きのない奴なんだろ、と軽く見ていたら、雷で撃たれたような感覚にあった。
これを、運命とでも呼ぶのだろうか。
顔も、髪も、声も、骨格も、立ち振る舞いも、すべてが今まで出会った誰よりも美しかった。

「はじめまして、日番谷冬獅郎くん。桃さんの同期のです」
「っ・・・」
「こら、シロちゃん。ちゃんとさんに挨拶して」
「は・・・じ、めまして」
「よろしくね」

微笑むだけで、背景が鮮やかに色付く。

ばあちゃんと桃とが歓談している。
それを邪魔するつもりはない。
だから、縁側で一人でスイカを食べた。
ここから眺める景色が好きだ。
穏やかで、落ち着く。
ふわっと、風が吹いた。
馴染みのない、けれど落ち着く匂いがする。

「冬獅郎くんはスイカ好きなの?」
「あ・・・」

声が出なかった。そのかわり、大きく頷いた。
話したいのに声が出ない。

「おいしい?」
「う、ん」
「よかったね。もらっていい?」

側に置いていた皿の上に残った切れ端に、は手を伸ばした。
俺は、その腕を掴んだ。
の戸惑った表情に、胸が締め付けられる。

「だめ?」
「端っこはおいしくないから、ちゃんとしたの、用意してくる」
「わざわざ申し訳ないよ」
「お客さんだから・・・」

一緒にいたい、話したい、顔を見ていたい。
でも、何もできない。勇気が出ない。
俺、こんなに何もできなかったっけ。

ばあちゃんたちの分のスイカをわけてもらっていたら、目が覚めた。



「おはようございます、隊長。お昼寝は終わりですか?」
か。・・・あぁ、休憩は終わりだ」
「京楽隊長にスイカをいただいたんです。いかがですか?」

夢、だったようだ。
目の前のテーブルに、切られたスイカが数切れ置かれている。

「どうかしました? 虫でもついてます?」
「いや、出会ったころのことを夢で見てた」
「どなたと出会ったころのことですか?」
と」
「私とですか。・・・十番隊に配属された頃?」
「もっと前だ」
「・・・私が、雛森さんに連れられて、おうちに遊びに行った日のこと?」
「そうだ」

は目を丸くして驚いていた。
しばらくして、小さく笑う。

「そうですか。隊長、スイカばかり食べてましたよね」
「うるせえ。いいだろ、別に」
「隊長、私の目を見て話してくれなかった。嫌われてるのかと思った」
「そ、それは・・・その、綺麗すぎて見れなかったんだ。緊張して」

は再び目を丸くする。
今度は微笑んでくれた。

「ありがとうございます。そんなに昔から好いていただいて、私は幸せです」
「お前はどうなんだよ」
「先ほど申し上げた通り、嫌われていると思ってましたので、好きとかそういう感情はありませんでした。
 過去は過去。今の私は隊長が大好きですよ」

掠めた唇。スイカの味。
夏がじきに終わるだろう。





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