最近メール来ないなと思えば、おかしな設定になっていて、すべてのメールが迷惑メールボックスに振り分けられていた。
焦った。
ダイレクトメールや本当の迷惑メールなら構わない。
けれど、友達や家族のメールがそんなところに入ってしまって無視したら大変なことになる。
彼氏のメールは尚更だ。
滅多にメール来ないけど。
迷惑メールボックスを閲覧していると、あってはならない名前が表示されて焦った。
すぐにメールを開く。
『お久しぶりです。冬休みはいつからですか? 時間があれば会いたいです』
謙虚なメール。
まだ高校二年生だから、四つも年上の私には気を遣うらしい。そんなもの、遣わなくていいのに。
結局、年末年始も仕事だったから、明日しか会えそうにないや。
すぐに返事する。
『ずっと働いてたー! 明日は休みだよ。巧くんもお休みならどっか出かけようよ』
年下はかわいいからいいな。
専門学校卒でもう就職しちゃったから、周りは遊んでいるのに私は働いてる。
かわいい彼氏がいるから、彼に見離されないならいいや。
仕事帰りの夜道。
お腹が空いてコンビニでパンを買った。
マナー違反だけど歩きながら食べよう、そう思ってコンビニを出たら携帯が鳴った。
着信だ。
「もしもし」
『成瀬です。お元気ですか、さん』
「もう疲れたよー。年末年始って忙しいね。私も休みたい」
『じゃあ、明日はゆっくり休んだほうが・・・』
「せっかく巧くんからお誘い受けたのに、メールが全部迷惑メールに振り分けられちゃって返事遅くなったし。
何より、私が巧くんに会いたいよ!」
『俺も、です。さんに、会いたいです』
「本当? 嬉しいなぁ」
『最近会えなかったし、電話もしてなかったし、少し、寂しかった』
「やだ、すごく嬉しい! 泣きそう!」
「『そんなところで、泣かないでくださいよ』」
通話の音声と同じ声が、背後から聞こえた。
振り返ると、巧くんが立っていた。
少し微笑んで、小さく手を振っている。
「寂しくて、会いに来ました」
「何それ、嬉しすぎるよ。巧くんは私のお年玉なの?」
「じゃあ、お年玉でいいです」
周りに人もいないので、人目をはばかることなく巧くんに抱きついた。
[ 寂しがる ]
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