放課後の音楽室。
サボりが多くて掃除をしているのは俺とだけ。
「」
「何?」
「俺、が好きなんだ」
「えっ」
「が、好きだ」
の驚いた表情、戸惑った表情。
ああ、俺は自惚れていたんだって知った瞬間。
国府津高校バスケット部のエースで、鬱陶しいなと思うような黄色い歓声も浴びたりして、
知らない女子から告白されることも増えて、
だったら、言えないでいた『好き』っていう言葉を今伝えてもいいんじゃないかと、
振られることもないんじゃないかと思った。
でも、全部、ただの自惚れ。
「ありがとう。でも、ごめんなさい。私、好きな人、いるから」
「そっか、ごめん、急にこんなこと言って」
「ううん、でも気持ちを伝えられるってすごいね。私には、そんな勇気ないよ」
困った顔も、最後には笑顔になってくれた。
「俺は、ただ自惚れてただけで勇気があるわけじゃないんだけどな・・・」
の背中を見送って、天井を仰いだ。
[ 自惚れる ]
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