執務室を出ると、廊下でが他の席官と会話しているのが見えた。
は相手を見上げて話している。
松本がそこへ近づく。松本ですら、その席官を見上げているのだ。

一九〇センチだったっけ、あいつ。

と松本は会話を切り上げて執務室へ向かってくる。
当然、部屋を出たばかりの俺の姿が見えるわけだ。

当然のことながら、二人とも俺よりずいぶん背が高い。
俺は彼女たちを見上げて会話する。
それを何十年も繰り返している。

俺の背は伸びない。

背伸びしてもに口付けることができない。
抱きしめたくても、俺が抱きついているようにしか見えない。
頭を撫でたくても、手が届かない。
重ねた手は、俺の方が小さい。

溜息は、彼方へ消えていく。
そんな俺の気も知らず、「冬獅郎、大好きだよ」とはいつも笑顔で言うのだ。





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