空を見上げたら、曇天で憂鬱になる。
地上は地上で薄暗く、早く家に帰りたくなる。
誰も待っていない家。
誰もきてくれない家。

誰って、誰?

誰かいたはずなのに、思い出せない。
忘れてしまった誰かは、今、どこで何をしているのだろう。
とても、大切だった。
どうして忘れてしまったのだろう。
ずっと側に、誰かがいたはずなのに。

神様、かの人が幸せであるように、願います。

それを、何百回と繰り返し願った。
一年が過ぎ去った。
まだ、かの人のことは思い出せない。


「忘れてしまうということは、私にとってそれほど大切じゃなかったのかな。
 やっぱりそうなのかな。・・・うーん、そうなんだぞ、と」
「おいおい、がどうして俺の口真似してるんだぞ、と」


自分と相手から発された妙な口真似で目が覚めた。


「レノ!」
、ただいま」
「おかえり。ずっと待ってたよ」
「すごい。一年もレノのこと忘れてた。なのにレノの声を聞いたら、全部思い出した」
「俺が魔法をかけたんだぞ、と」
「何の?」
「俺がいなくなっても、が悲しまなくていいように、俺のことを忘れろって」
「そんな・・・」


レノの顔を見たら涙が止まらなくなる。
少し痩せたレノの頬に手を添えた。
困ったように笑ったレノは、私をぎゅっと抱きしめた。


「もし、が俺のことを思い出すことがあったら、
 そのときは、俺をの側にいさせてほしいと願ったんだぞ、と」
「誰に?」
「神様に」
「レノは神様なんて信じてるの?」
「死んだと思ったのに、俺は一年かけてに生きて会うことができた。神様の仕業としか思えないぞ、と」





[ 願う ]





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