「酷いよ、こんなこと、誰が・・・」
「酷いな」
生物実習室の掃除を終えて教室に戻ると、の机の上のスクールバックに濡れ雑巾が架かっていた。
引き出しに入れていたはずの教科書も、床に散らばっている。
雑巾を掴み、手洗い場に向かって洗った。
水を絞った雑巾は、廊下の手すりに掛けて干しておく。
教室に戻ると、は泣きそうな顔のまま、まだ机の前で突っ立っていた。
床に散らばった教科書を拾い集め、机の上においてやる。
「ほら、突っ立ってないで、帰るんだろ?」
「もう、いい」
「何がいいんだ?」
「諦めたからいいの。うちには帰らないし、ここにはもう来ない」
「それは困る」
俺も、もう諦める。
これ以上、友達ヅラするのは無理だ。
「明日も、絶対来い。俺に、会いに来い」
「成瀬くん・・・」
「、お前が好きだ」
抱きしめたの体は、見た目以上に細くて、柔らかかった。
[ 諦める ]
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